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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
※ ※
「……」
「……」
あの日を眩しく思えばこそ、僕は戸惑っている。
出会えていた幼い二人が、その後も普通に成長していていたのならば。そう思わずにはいられない。そうであったのなら、少なくとも僕はもっと木織のことを気遣うことだってできた筈だった。
でも、もう遅い。こんなことになっていて、そんなの今更――。
「じゃあ、帰るよ……」
顔を俯いてしまうのは、合わせるべき顔を持たないから。それは常に同じだ。
なのに――
「待って」
と、木織は部屋の扉と僕との間に――立つ。
「な、なに……?」
「有耶無耶にしないで頂戴」
「有耶無耶って……?」
「さっき、言ってたでしょう。もう――よそうって。それは、本心?」
そう問われて困惑した僕は――
「あ、いや……もう、お金だってないから……」
そんな風に言って、更に自らを嫌悪している。
木織はそんな情けない僕のことを、暫く眺めてから。少し苛立ったように、こう言うのだ。