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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
※ ※
確か高校二年生に進級したばかりの頃――。
その当時の僕は、たぶん傍から見る分には、普通の男子高校生でいられたように思う。否、誤魔化していた。それは必死に、見ない振りをしていた。
僕の心の奥底では、いつだってあの日の光景が繰り返されていた――けども。僕は酷く鈍感な獣か何かにでもなったつもりでいて。
常に傷ついているくせして常に笑いを絶やさないという、奇妙な生き方をしていた。
「アハハハ! それでさぁ――」
「ウフフ――なんなの、その話?」
「ね――可笑しいでしょ?」
「ええっ――わかんないけどー」
内容が一切伴わない話にケタケタとした笑い声をそえて、その日も僕は同じクラスの女の子と一緒に下校中。それとなく僕に興味を示していたらしい彼女のことを、あの頃の僕がどう思っていたのかはあんまりはっきりとは覚えていない。
ともかく、それから――
「ねえ――コッチ。家、なんでしょ?」
彼女は細い路地を指差し、そんな風に言った。改まった言葉が、少し空気を妙な感じに変えた。
訊かれた僕は、ちょっと澄ました顔で。
「そう、だけど――それが?」
「少し寄ってっても――いいのかな、なぁんて?」
すぐ近くで小首を傾げられて、僕は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「別に――いいけど」
内心ではドキドキしながら惚けた感じで言うと、僕は彼女の手を引き家のある路地を曲がって行く。