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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
僕がそんな風だったものだから、当然のように何一つ深く物事を思慮しようとはしていなかった。
ああ、そう言えば――今日、家に母さんいないんだっけ……。
なんてことを脳裏では確認していながら、そこはかとなく胸が高鳴ってゆくこと――それを、少なからず愉しげに感じていたのかもしれない。
あまりにも愚かな僕は、自分のことを知らな過ぎた。心の傷に対して、無防備だった。
だから、あの厳しい眼差しは、僕のことを見張ってくれていたのであろうか――。
「……」
「――!?」
同級生の女の子と手を取り合い家に帰った僕を、調度向いの自宅から出て来た木織が無言で出迎える格好になった。
木織は両家に挟まれた路地の真ん中で佇んでいる。僕も期せずして、その少し手前で足を止めた。
「……」
押し黙ったまま責めるように向けられた瞳から、僕は逃れて俯くとアスファルトを見つめる。
繋いでいた手を放そうとした刹那、それをギュッと握り返して一切の事情を知らない彼女は訊くのだった。
「誰――知り合いなの?」
微笑みに僅かな緊張感を携え、僕の同級生は僕の幼なじみのことを見据えている。