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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
「今日――叔母さん、遅い日じゃないの? 金曜日だし」
「だっ……だったら、なに?」
「別に……ただ……いいのかしら、と――思っただけ」
「は……?」
ロクに挨拶さえしないリアルな幼なじみに、どうしてこんなことを言われているんだろう。僕は木織の真意がまるで解らなくて、頭の中ではクエスチョンマークがグルグルと回った。
だから、それが――木織の示した優しさであること――そうだと気づくことなどなくって――。
「……」
それでも心の中の傷が疼くと、僕は急激に臆病者と化した。
そんな僕をよそに――
「ねえ、なに――一体、なんの話してるのよ」
「貴女には、関係ない――」
「ハァ!」
「いいえ、ちょっと訂正。貴女のような人は――彼と、関係しないで頂戴」
「なっ……!?」
火花を散らしたような言葉のやり取りの末、言葉を詰まらせるほど怒りを顕わにしようとしたのは――同級生の彼女の方だった。
「……」
そんな顔をチラリと横目に眺めている僕は、二人の間に立って宥められるようなタイプではないの――だから。ひたすら困惑した末に、早く一人になりたいと願う。
そうして――
「今日は――もう、帰って」
そう言ってしまったが最後、もう彼女とさっきのように愉しく話すことはなかろうと思いつつも、僕の中で病んだ古傷の疼きは――静かに止んだ。