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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
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一体、どこかから語ればいいのか、それがよくわからない。そんな感じであるのは僕の頭の中身と同じで、どろどろと溶けて常に混沌としているから、そんなものをどう整理していいのか、それもやはりわからないのであった。
だからとりあえず、それは記憶に近しい部分から――僕の心のコアの、とっても痛い部分の、それはその表層の辺り。
半年前にバイトを辞めている、その直接の原因となったエピソードだった。
「ね――この後、どこかに行かない?」
それはたまに同じシフトになるバイトの先輩からの誘い。たぶん歳は同じか僕より少し上くらい。見た感じは大人しめで仕事もテキパキと真面目にこなしていた印象。
束ねられた髪が均等に両肩へと流れ、その片方を指先で弄りながら、彼女ははにかんだ微笑みを携え、上目使いに訊ねている。
改めて――否、おそらくこの時に初めてまじまじと眺めた彼女は、思いの外可愛い顔をしていた。
「この――後?」
――と、繰り返してみるが、その意図は既に明確だ。午後十時――それはお互い夕方からとなっていた勤務が、もうじき終わる時間である。