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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
結局そんな誘いに対して、果たして自分がどう応じていたものか、僕はそれすらよく憶えてはいない。きっと少し悩んだ気はしている。それでも断ることはできなかった。
僕はやはり無防備だった。それと、如何ともし難く、寂しかったのかもしれない。
夜のコンビニを後にした僕たち二人は、並んで歩きながら「どうしよっか?」なんて何度か話す。
どちらからともなく「ご飯でも行く?」「うーん……どうかな」とか、「カラオケは好き?」「ううん……あんまり」とか、気の抜けたような会話が続いた。
そうして暫く歩いていると、少し先を進んでいた彼女は不意に立ち止まり。それから僕の方を振り向いて、言う。
「フフ、話してたら着いちゃった――ウチ」
「え……?」
「ほら――そこのアパートだよ」
「……」
そうして指差された先にある、建物。僕はまだ白壁の真新しい、そのアパートの建屋を何気なく見上げていた。