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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
この若い男と女の茶番な風景は、つまりあの時と同じだ。そう。高校の同級生を誰もいない家に連れ帰ろうとしていた、あの場面だ。
何とも言い難い白々しさと胸に秘めた猥雑な想い、あとお互いに何となく好意的な異性であるというだけの関係、それらも。年齢がより大人のそれに近づいたことで、よりあからさまなのである。
それは、僕も――そして、目の前で半裸となった彼女も。
「……」
そんなことに一通り気がつきながら、それでも僕はこの茶番を続けて行こうとしている。
だって、ここは知らない部屋で、だから当然――木織だって、止めてなんてくれないのだ。
クス――鼻腔から零れた空気が、彼女の笑いを伝えている。
「もう、恥ずかしいから――そんなに、じっと見ないでよ」
「……」
僕はまだ、自分という実態(もの)を見ない振りをしているから。
まずは視界から来る刺激に、自らの男の部分を昂らせることに――まるで、恐れを抱くでもなくって。そんな風だから――
そうだ――この時の僕は、まるで僕のことを知らな過ぎたんだ――と思う。