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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
どれくらいの時間、水の中に潜っていられる? ――不意の質問。
えっと……一分くらい、かな。 ――少し考え適当な回答。でも熟考したところで、それは同じなんだって思う。
プールや海で泳いだ経験があるから、僕はその問いに答えることに迷わないでいられるのだ。突然、妙な例えをしてみたけれど、須らく人生を歩んで行くということは、すなわちそういうことではないのか。
飛んで来た小石が頭に当たれば、こぶができるしかなりの痛さを覚える。石が尖っていれば血だって出るだろうし、もしそれが小石より大きな石であるなら、たぶんそれくらいじゃ済まない筈だ。石が飛んでくる速さによっても、その危険性は著しく変わるのだろう。
一つの似たような経験を元に、僕は未知なる脅威に対しても警戒をすることだってできたのである。
だけど――この時の僕は、迫り来ている危険に対して、まるで無防備だった。
「ねえ――どうするの?」
ふっと息を漏らしつつ、彼女はシャツを脱いでいる。黒い紐がかけられている肩、それを意識的にきゅっと窄めると、その向こうから顔を傾げた彼女は僕に訊ねてきていた。