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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
「なっ……!?」
僕の頭の中を、真っ白な風が吹き抜けていた。
何から訊ねていいのか、それがわからない。否、そうではなくて――そのことについては、何も知りたくなんてないのかもしれない、僕は――。
「あ……あ……ううっ…………」
言葉で喉の奥の方を詰まらせた感覚に陥ると、瞬間。もしかしたらこのまま話せなくなるのではないかと、そんな心配をしていた。
すると――
「大丈夫?」
木織に訊かれ。
「あ……う……うん……!」
やっとの思いで、頷く。そしたら――
「ごめん。でも――一緒だから」
「えっ?」
込み合った車両の中で、木織はそっと僕の膝の上の手に自らの手を重ねた。
そして――
「私と一緒なの。だから、怖くても――平気」
僕の目をじっと見つめて、そう言った言葉の意味を――僕は初め、違ったように受け止めてしまう、けれども――
あ……!
重ねられた木織の手も震えていることに気づくと――そうか、木織も怖いんだ、と――僕はわかっていたのだ。