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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
自分で勝手にした約束だから――木織はそう訴えながらも、その瞳を車窓からの陽射しに頻りと潤ませてゆく。
行って、どうなるのかなんて、わかるわけもなかった。古傷を生々しく、深く抉り返される――そんな最悪の予感だけがしている。
けれど、このまま木織を一人で――そんなことをしたら、僕は二度と木織の隣りにはいられないのだと、そう強烈に感じていた。
だから――
「一つだけ……聞かせて」
「……?」
小さく首を傾げ、見つめ直した顔に――僕は訊ねた。
「木織はどうして、そこまでして……僕のこと、見捨てないの?」
「それは……」
木織はそう応えようとしてから、自分の胸元を左手で抑える。そして――
「お願い……終わった時……その後で……伝えさせて……」
一つずつ言葉を噛みしめるようにして、そうように言ったのだった。
その姿を見た時に、僕はともかく、なけなしの覚悟を決める。
「わかった。一緒に、行こう」
僕は重ねられていた手を、強く握り返した。