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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
馴染みのローカル線から、下りの快速に乗り換えて数十分くらい。僕たちが暮す同じ県の県庁所在地である三十万都市――その街並みに降り立つ。
「……」
久し振りに訪れ感じる、地方にしてほどほどの都会感。休日のこの日、多くの人々が駅より街のあちらこちらに流れ出て行く。先ずはその流れに身を委ねて、木織と進んだ。
県内……こんな、近くに……。ごくりと喉を鳴らし、僕は思っている。今日のこの時まで、その動向を探ろうなんて――否、想像することすらなかったから……。
それが、地続きの世界にいると考えるだけで、不可思議な嫌悪に襲われかねない。只でさえそれであるのに、此処は僕の知る――街並みなのだ。
「平気?」
問われて向くと、木織が不安そうな僕を見ている。どうやら電車を降りてから、ずっと気にしてくれていたみたいだった。
「う、うん……」
空元気でコーティングすることすらできずに、情けなく頷く。すると――
「木織……?」
「とりあえずは――ね」
それは、いつ以来だったのだろう? 珍しく僕の前で、木織はその微笑みを零していた。同時にすっと腕をからませて、身体をぴったりとしな垂れてきている。
休日の街を僕と木織は、まるで恋人みたいに歩いていた。
とりあえず――今、だけ……?