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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
「このマンションの六階――そこに、いるからって」
「へえ……そっか……」
僕の耳は、その他人事を他人事のようにして、聞いた。
気のない反応が気になったのだろう。木織は僕の腕につんと触れて、視線を向かせ――言う。
「私だって――自分が間違ってるかも、って――あんな人に貴方を、わざわざ会わせるなんて、どうかしてるんじゃないか、って――そう思ってる」
「……」
「でも、このままは嫌だから。滅茶苦茶にされて、このままだなんて……」
木織は最後まで言わずに、微かに潤ませた視線を足元に落した。
「――木織」
「……?」
「僕だって嫌なんだ。変えたいと思う。だから今日、此処に――木織は連れて来てくれてる」
僕はそう言って木織の手を取り――
「なら――行こうよ」
そう言って、件のマンションへと――歩を進めた。