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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
思いの外、勢いよく開いたドアに、僕は追われ。その開閉を妨げないように身をよけると陰に隠れ、『中の人』とのファーストコンタクトを木織に委ねる形となっていた。
「え、ああ――ホントに来たの?」
その呆れたような声が、僕の記憶の中のものと合致している。
「迷惑でしたか?」
木織がそう問い返すと――
「別に――いいけど。それで――来て、どうしようというわけ?」
少し張りを取り戻した声は、責めるような響き。
それを受け――
「私、個人的には――貴女に、文句が言いたくて来ました」
「へえ……」
「だけど――」
そう言いかけた木織が、僕の方を見たから――
「――!」
その気配を察してのこと。彼女は壁に叩きつけんばかりに乱雑に、マンションのドアを更に大きく開いた。
ギシッ――と、油の切れたアームの金具が軋む。そして――
「あ……」
僕は驚きの中で、六年半ぶりにその顔を見つめた。
対し、彼女の方は――くす、と。
「――どうも。久しぶり、だね」
寝起きの化粧気のない口元に、笑みさえ携えている。