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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
「ここで立ち話もなんだし――せっかくだから、入れば?」
「……」
僕と木織は不安げな顔を、思わず見合わせていた。
結局、なし崩しに通された部屋の中は、思ったよりも広かったけれど、全体的に酷く雑然としていた。フローリングの上は一様に埃っぽくて、雑誌だったり新聞やチラシが散らかり、その上を何度も踏み馴らした形跡がある。
足の踏み場を探しながら進むと、リビングらしき部屋の窓側には、L字のソファー。その上には、洗った物なのか脱いだ物なのかも判別のつかない派手な色目の衣服が幾重にも重なっていて。それを前にしたガラステーブルの上には、化粧品だったり香水だったりの小瓶等々が、所狭しと並んでいた。
「ま、適当に座って」
そう言われるも困惑気味に立ち尽くす僕らをよそに、この部屋の主はバタバタとした足取りでキッチンの冷蔵庫から缶ビールを片手に戻り、L字のソファーと正対する位置に背を向けている籐の椅子にボスンと背を預けた。
その勢いのまま椅子は回転して、艶めかしいショートパンツの脚を組みつつ、彼女は僕たちの方を見据えた。そして――
プシュ! ――缶ビールのプルタグを引き、それをグビリと煽る。
「……」
その様を、僕は呆然として眺めていた――。