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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
「……ッ!」
僕の前に立つ木織の――頬の辺りが、かあっと紅潮してゆくのがわかった。唇をきゅっと噛んで、何かに必死に耐えているのだと思った。
僕らは一体、誰と何の話をしているんだろうか。思わず、見失いそうになる。それぐらい一片の容赦もなくて、相容れない相手なのだと思った。悪意の塊のようで、それが真に敵なのだと感じた。畏怖、……していた。
そんな僕らが怯んだのをいいことに、彼女は更に、僕の心の中の必死に隠して来た触れられたくない部分を――無遠慮に無慈悲に――掘り起こそうと、してゆく。
「ソイツの相手、大変だろぉ? あの時もさぁ……コッチは四人で代わる代わるだってのに、もう起ちっ放し――アハハハ! 葉っぱでラリってたから、よく憶えてないんだけど。一体、何回イッたぁ? その意味ではスゲぇよ、ホント――」
アレ……!?
その話を聞いている内に、頭がクラクラとしてきていた。視界の中が急に暗くなったように感じた。立っているのが辛くて、グニャリと床が歪んだような錯覚を受けた。
ウッ……!
気持ち悪くて、これは吐きそうな気配――だ。
そしたら――
「きゃっ――危ない!?」
僕は前のめりに倒れ込んだみたいで、咄嗟に肩を支えた木織がいなければ気絶していたのかもしれない……。
僕の心は……もう負けそうで……此処に、何をしに来たの? だったり……微かな理由も動機も、失って……ゆく、よう、だった。