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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から

 すると、ふと目が合い――寺井が僕に訊いた。


「疲れた? 少し、休憩する?」


「ああ、うん」


「じゃあ、飲み物でも」


 寺井はそう言って立ち上がると、冷蔵庫から自分で買ってきたペットボトルを二つ手にして戻る。


「はいよ」


「あ、ありがと」


 そうして、その一つを僕に手渡すと、また床に腰掛けて口元に運んだペットボトルを徐に傾けた。

「……」

 僕は何故か、その様子を注視している。


 シュワッと泡を弾きながらコーラを飲み下してゆく、寺井。

 ゴクゴクって鳴らす喉。飾り気のないTシャツ。その油断しきった丸首の襟から、その奥の胸元がチラリと覗きそうになって……。


「え、なに?」


 と、不意に向けられた視線に、僕は焦った。


「な、なにがっ、さ!?」


「だって、見てるし」


「別に……見てなんか、ないしっ」


「そ――?」


 剥きになってしまった僕の顔を、寺井は不思議そうに眺める。



 僕が寺井夏美を女として意識したことは、たぶんなかった筈だ……。

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