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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から
「あ……いや」
僕は期せずして指摘された顔の色を手で覆うと、誤魔化す術を求めるように部屋の中を見回した。これ以上取り乱して、変に思われてしまうことを恐れている。
すると――僕の目に止まったのは、午後十時を回った時計の針。
「あ、もう――こんな時間だ」
幾分わざとらしい口調で、僕は言った。
「ん、だから?」
キョトンとしている寺井に――
「ほら、終電――間に合わなくなるし。急がないと」
僕は慌てたように、そう急かす。
なのに――
「え? 私、今日は帰らないけど」
寺井はあっさりと、そう言うのだった。