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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から
 作業に戻ってから、数時間の間。


「コレ、お願い」


「あ、はい」


 僕たちの間で交わされた会話は、たったのそれだけだった。

 寺井がペン入れをした原稿を受け取ると、そこにベタを塗ったりトーンを張ったりして仕上げるのが僕の主な役割。一応はネーム段階で僕たち男どものアイディア(妄想?)は取り入れてあるけど、ほとんど漫画家に対するアシスタントといった様相だった。

 だけど単調である筈の僕の作業は、一向に捗らろうとしない。


「……」


 僕は時折チラリと寺井を見ると、さっきの言葉の意味を考えたりしていた。

 化粧気のない寺井の横顔は、何時もとまるで変わらない筈。それなのに――

 すっきりとした白い肌の横顔。ショートカットの黒髪を掻き上げる仕草。その時に首筋に見つけた小さな黒子。


 そんな些細なものが、否応なく僕の視線を釘付けにした。

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