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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から
「ヨシ――完成!」
この日のノルマであった原稿を仕上げて、僕は満足げにそう声を上げた。
「――って、アレ?」
それに反応が無いことを不思議に感じて、僕が寺井の方を振り返ってみる――と。
「なんだよ……」
くぅ、くぅ――って、それは静かな寝息。
寺井は机に突っ伏したまま、その意識は夢の中へと旅立っているようだ。
「まあ、ね」
時計の時刻を見て、僕は苦笑。もう真夜中の三時を回ってる。
僕は椅子から立ち上がり、丸めていた腰をさすりつつ、ひと伸びをした。
原稿を仕上げた充足感は、思いのほか爽やだから。ちょっと前にあった邪な期待は、今は随分と薄らいでいる。
だから疲れに任せて、このまま僕も寝てしまえば、いいのだろう。
だけど、僕は寺井の傍らに座ると――
「……」
その寝顔をじっと見つめて、暫く動けなくなっていた。