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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から

「……………………」


 まるでフリーズしたように、僕はそれを凝視していた。

 その二つの膨らみの造形を、映像として脳裏のメモリーに焼きつけんとばかりに。


 そうしていると――


「な――なんか、言いなよ」


 と、寺井が言うから。


「なんか、って?」


「別に、思った通りでいい――貧乳で、ガッカリとかさ」


「そ、そんなこと、思ってないよ」


 確かに小さい胸だけど、僕はホントにそんな風には……。


「だったら、どう思ったの?」


「どうって……」


「せっかく見せたんだから、ちゃんと感想を聞かせてよ。それと、できれば――やっぱ無理にでも、褒めてほしい……かな」


 寺井にそう言われ、僕は再度その胸をまじまじと見つめた。

 彼女が言うように、小さ目な膨らみも。ツンと強張った乳首も。

 それに軽い感動すら覚える僕であるけど、それをどう表現していいものか。僕は当然ながら、その手の語彙に乏しい。


 褒めるって……どう言えば?


 難題を前に考えた挙句、僕が発した言葉――。


「なんか、さ。とても……かわいい、って思う」


 それを耳にすると、寺井は面倒そうにポツリと呟いた。


「なに、それ」


 怒ったのかな、と。でも、違う。


 話しているその間ずっと、寺井は顔を横に叛けていた。

 そっぽに向けられた眼差しは、前髪が隠していた――けれども。

 その横顔の頬は、今度こそ言い訳ができないくらいに――紅く、染まっていて。

 彼女の言動や行動だけが、その全てではないと――僕は実感している。



 そして、そんな寺井であるのだから。

 僕は本心から――『かわいい』と、言えたのだった。

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