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桜舞うあの日のままで
第10章 旅立ちの朝、舞い散る桜
 悠がゆっくりと手を離して言う。

「じゃあ……またな。風香も元気でいろよ」

「絶対、連絡してね」

 涙声で言う風香に、「うん、もちろん」と答えてから、悠は電車の方を振り向く。

 すでに電車は停車位置に止まっていた。

 スッと開くドアから、大勢の人が降りてくる。



 そして、降りる人がいなくなってから、悠がゆっくりと一歩踏み出した。

 ちょうどそのとき、悠と風香の間を風が拭きぬけ、またしても桜の花びらを運んでくる。

 桜の花びらが舞う中、遠ざかっていく悠の広い背中を、風香は胸が張り裂けんばかりの想いで見つめていた。




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