この作品は18歳未満閲覧禁止です
桜舞うあの日のままで
第10章 旅立ちの朝、舞い散る桜
悠はおもむろに電車へと乗り込むと、すぐにホームの風香の方を向く。
風香はもはや溢れ来る涙を抑えきれず、ハンカチを目に当てていた。
そんな風香に向かって、悠が悲しさと寂しさを隠しきれない表情で「じゃあな」と言う。
風香が「またね」と返した瞬間、ドアが閉まった。
風香にとっては無慈悲にも感じる素早さで。
悠は寂しげな微笑と共に、風香に手を振る。
風香もハンカチで目じりを拭いながら、空いている方の左手で手を振った。