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ブルジョアの愛人
第12章 初夏の蕾
決して大きいとはいえないダイニングテーブルには、色とりどりの料理が並べられた。
「ちょっと作り過ぎちゃったから、いっぱい食べてね」
「明らかにちょっとどころじゃないでしょ」
エプロン姿ではしゃぐ真緒の母、絵里加と真緒のやり取りを、優々は困ったような表情で見ていた。
「ゆゆおねーちゃん、ぼくのさやいんげんあげるー」
「嫌いなものを人にあげないの」
小さな手で不器用に箸を持つ弟を真緒は母親のような口調で叱った。翔太は小学一年生である。可愛い盛りの翔太は、初めて逢う姉の友人にもすぐに懐いてくれた。優々はそれが嬉しかった。
「ごめんね、騒がしくて」
優々が家に上がったときから一番騒いでいる絵里加に笑顔で謝られ、優々はそんなことないですよ、と返す他なかった。
「あたし、兄弟いないので寧ろ楽しいです」
本心だった。真緒のような姉や翔太のような弟がいたらどんなに楽しいだろうと優々は思う。