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裸足のprincess
第1章 雪のせい
雪が降る。
天使の羽みたいに。
雪が降る。
裸足で駆け出しちゃって。
追いかけて、なんて笑って。
世の中の恋人達は忙しそうだ。
私はカーテンから見える広場を恨めしく睨んだ。
コンコン。
「入るよ」
「ダメ」
「ダメは来ての反対だから。襟菜」
拒絶を蹴飛ばして入って来たのは、神崎裕也。
「あんたの理屈で世界はまわってないし」
煙草を片手に私を撫でる。
蒼のラインが入った黒髪。
アイラインを引いてるんじゃないかって位にハッキリとした二重。
浮き彫りになった鎖骨が造る影のせいか、外見はかなり艶やか。
「まだ風邪は治んないの?」
「なんでそう思うの?」
私は裕也の手を払って布団をギュッと握った。
肩に髪が当たる。
そろそろ切りたい。
うなじにチクチク刺さる。
「不機嫌だから」
「ウルサいな。不機嫌だってわかってるなら出てってよ」
「だってココ俺の部屋だし」
ムカつく。
そうだ。
私は三日間風邪のせいで裕也のベッドを借りている。
服も。
今だって大きいTシャツを着てる。
ブラジャーなんて洗わせたくないから、してない。
だから何かむず痒い。
でも、そんなこと言ったら絶対コイツはスイッチ入ってしまう。
言うものか。
「雪やまないな」
「本当に……寒いから早くやんで欲しいんだけど」
裕也が私の後ろから窓を覗く。
「わわっ! いいよ、見なくて」
私が何を見ていたか知られたくなかった。
でも、時既に遅し。
ニヤァと笑って広場を眺める。
「そっか。襟菜も雪の中で遊びたいんだな。わかった」
「わかってないから!」
ボフッとカーディガンを被せられ、三日前に着てきたコートを引っ張り出してくる。
「え? 行かないよ!」
布団に丸まる。
しかし、すぐに剥がされた。
「寒いから! ふざけてないで返してよっ!」
「りょうかい」
裕也はくわえた煙草が付かないように布団を抱えて、玄関に向かう。
手を伸ばしたまま呆気に取られていると、振り向きざまにこう言った。
「ココまで来れば?」
そしたら返してあげる。
あぁっこのやろ。