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裸足のprincess
第1章 雪のせい

 暫くベッドの上で体育座りをしていたが、冷気が容赦なく体温を奪う。

 扉一枚向こうに玄関はある。

 私は意を決して床に足を着いた。

 「ぃぃいい!」

 裸足には辛い冷たさに瞬時に足を上げる。

 良かった。

 扉が閉まってて。

 こんなところ見られたら恥ずかしすぎる。

 今度は慎重に、爪先から下ろしていく。

 だからスリッパ買おうって言ったのに。

 あの馬鹿。

 足のサイズが違いすぎるから靴下も借りられないし。

 あの巨足。

 足が慣れるまでピエロみたいに揺れていた。

 よし。

 裕也が置いていったコートを羽織り、マスクを付ける。

 鏡で寝癖だらけの髪を整え、スプレーを持ってこなかったことを後悔する。

 今さら仕方ない。

 ゴムも無いから髪は下ろしたまま。

 まぁ、いいか。

 ドアノブに手をかける。

 「おっ、やっと?」

 「何様よ。ほら、布団返して」

 裕也は床に置いてあるソレを顎で示した。

 「そこにあるじゃん」

 「……あんたって」

 私は歯を噛み締めて身を屈めた。

 その瞬間腰に手を回され、担ぎ上げられた。

 「ちょっ! ナニしてんの!」

 「折角キレイに身支度してくれた襟菜を布団に独占させるワケにはいかないだろ?」

 「意味わかんないっ。降ろして、馬鹿!」

 「却下」

 裕也の背中を両手で殴るが、全然効いていない。

 脚をバタバタしても通じない。

 呆気なく玄関を出て、公衆の面前に晒される。

 え?

 今、私凄い恥ずかしくない?

 前から見たらお尻から下が……

 「降ろしてっ! 裕也、本っ当に。絶交だから! ハイ、3、2、1……」

 上体が浮き上がったたかと思うと、スッと頭を支えられ、脚を持ち上げられた。

 数秒でお姫様抱っこに変身してしまった。

 「騒がないの」

 目の前に裕也の顔があって、体温が急上昇していく。

 こんな時だけ張り切る心臓。

 口はパクパクするだけ。

 私の体は情けない。

 「ほら、まだ降ってるよ」

 鼻先に冷たい欠片が乗り、消える。

 「……本当だ」

 裕也の髪にも絡まってる。

 黒髪に映えて、輝く。

 「って、いつまで抱っこなの!」

 「え? 降りたいの?」

 「当たり前っ!」

 「裸足で?」

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