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裸足のprincess
第1章 雪のせい
「いらっしゃーい」
晴れた夕方、私と裕也はまたあのバーに訪れた。
あの日と違って沢山の客で賑わっている。
絨毯の好評は良く、客は二割増したそうだ。
レモンサワーを飲みながら、ブレスレットを明かりに透かしてみる。
キラキラとピンクが揺らめく。
「気に入ってる?」
「裕也が思ってる以上にね」
「あ……え、うわ、嬉しい」
「なにニヤニヤしてんの」
「それ俺がこないだ言ったセリフじゃん」
「さぁてね」
裕也は今日もマンナーラだ。
紅の血。
私は密かにブラッドベリーと呼んでいる。
格好良いじゃない?
「マスター、おかわり頼める?」
「はい、毎度」
夕日が差し込む。
窓際のテーブルに朱い模様が浮き上がる。
「……誰がわかるだろうね」
「なぁに?」
「この絨毯。初めに歩いたのは襟菜で、裸足だったってことにさ」
「ナニ言ってんのよ、馬鹿」
馬鹿。
嘘。
大好き。
嬉しかったよ。
「あのさ、裕也」
「ん?」
「来年もさ、雪、降るといいね」
「そうだな」
小さな約束。
来年も、一緒に雪が見たい。
一緒に過ごしたい。
次こそ元気でいるからさ。
ダメならまた次の歳だって
別に悪くない