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桜色、恋色、ーこいごころー、
第1章 花びら、一枚
四月、私は長年住んでいた地元を離れ、東京の大学へと入学するために都内のマンションへと引っ越して来た。
引っ越して一息、部屋いっぱいに積まれた段ボールを開封し片付けること2時間。やっと落ち着いた。
(疲れたなぁー………)
ギシッとベッドに寝転がり、天井を見上げる。
やけに静かで、ふっと、今まであった家族と言う温もりを思い出してしまい、視界が滲み始める。
(!……やだ、……もうホームシックになるなんて)
急に襲って来た寂しさに、胸が押し潰されそうになる。
『っ、………』
(泣いちゃダメ…泣いちゃダメ……)
「あぁっん!!…」
ビクッ!?
(なっ、……何?)
それは、間違いなく隣の部屋からだった。
あまりにビックリし過ぎて、寂しさはぶっ飛び、涙は見事に引っ込んだ。代わりに込み上げるこの感情に名前をつけるとしたら、羞恥心…だと思う。
(これって、……まさかのまさか、だよね…?)
ベッドから飛び起きて、壁を思わず擬ししてしまう。
ドキドキ煩い鼓動を抑えるように、胸元の服をぎゅっと掴んだ。けれど、声はあれ以来聞こえない。空耳…?空耳…であって欲しい。
『はぁ………』
(何だぁー…ビックリした)
変な緊張感に踊らされて更に疲れがました気がした。
脱力感に襲われて前のめりで深く息を吐いた。
「あっ、…ダメダメいくぅ…ーー!!」
ビクンッ!!
『うわぁっ!?』
シャキーンと背筋が伸びた。
心臓はまさに早鐘である。
これは……アレ?壁ドンとかやった方が良いのかな…。
その、聞こえてますよー的な優しい感じでノックするように、けどやっぱり申し訳ない感じもする。
恥ずかしいよね…女性の立場からしたら聞こえてほしくないよね。
でもやっぱり聞こえて来る声は抑えられている様子はなくて、私はー…。
(ごめんなさい……)
コっ………コン、コン、コン。
心の中で謝りながら、壁をノックした。