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第1章 ママと僕の誘拐劇篇 　第一部 憧れの女は義母

高見祐太はまだあどけなさの残る顏を紅潮させて、自分専用のノートパソコンの画面を食い入るように見つめる。良家の子女が通う名門、慶楊大学中等部の一年生で12歳だ。お受験に成功し、自由気ままな学校生活を手に入れた少年が深夜まで勉強に打ち込むはずはない。一応形ばかりは物理ⅠBのテキストを学習机の上に広げてはいるが、心ここにあらずでマウスを動かし、動画サイト「ME　TUBU」を食い入るように見つめる祐太。彼が熱を上げているのはお年頃の男の子らしく、一人の美女だ。と、言ってもアイドルグループのメンバーでもなければ、タレントでもない。まだアナログ時代に収録されたと思われるやや粗い画像には、サイパンらしき場所で砂浜を元気に走り回る純白のビキニ女性の瑞々しい肉体が映し出される。水着の色とは正反対にムチムチとした柔肌はこんがりと薄チョコレート色に日焼けし、芸術的な健康美を惜しげもなく曝している。推定88㎝はあると思われる爆乳は、現代のグラビアタレントも及ぶまい。時折カメラ目線で微笑むその顔はやや古風な瓜実型で、涼しげな瞳が印象的な純和風美女である。女優張りの端正な顔立ちにアンバランスなナイスバディを愉しげに揺らし、波打ち際ではしゃぐ姿は天真爛漫なマーメイドといったところか。
「こんな時代もあったんだ…」
その愛くるしさに心奪われ、思わずつぶやく祐太。今や彼女は、水着で走り回ることなど想像がつかぬほどの超が付く有名人。大手ビール会社のキャンペーンガールを務めたうえ、名門慶楊大学時代にはミスコンでグランプリを獲得した彼女は、卒業後は文化人が司会を務める報道番組のキャスターに大抜擢され、知性溢れるコメントと上品な語り口で世の男性たちを虜にした。だが、女ざかりの31歳にしてバツイチのTV局員と電撃入籍をし、TV界から突然フェードアウトしてしまった。しかし引退から2年が経過してからも、復帰待望論が週刊誌やネット上でも絶えることはない。彼女の名は伊集院雅子という。