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先生と私
第3章 幼馴染
霊園の入り口で花とお線香を買った。

肌寒い道を10分ほど歩いたところに、瑛二の母親の墓はあった。
とても綺麗に手入れがされてあり、少し萎れた花が活けてあった。花を新しいものと取り換えた。

「レナが 来たぞ…」

瑛二がそっと墓に向かって言った。私は胸が詰まった。

「引っ越した後、お前、一度お袋宛に手紙よこしただろ?」

そうだった…音大に入るためにピアノを続けていること、友達も出来たこと、お礼と一緒に手紙に書いた。

「お袋とっても喜んでさー。引っ越してもピアノ弾いてるんだってー良かったわねーなんて喜んでてさ、私の代わりにあなたが書いて…って言ってさぁ何度か書いたんだよね手紙。」

瑛二は遠くを見ながら言った。

「え…手紙?知らなかった。」

…はっとした。

「もしかしたら、母かも…。ごめんなさい。」

母親は友人とのお茶会やパーティーと忙しい人だった。だが、引っ越し後それまで交流のあった友人や知り合いと、一切連絡を絶った。お嬢様で育った母は、父の事業の失敗という出来事は、余程受け入れ難いものだったのだと思う。

「そっか…。お前が知らなかったんだから仕方がねーよ。」

瑛二は、線香に火をつけた。帰りは、瑛二の希望通りラーメン屋に寄り、私も遅いお昼をとった。瑛二はラーメンと一緒に餃子と半ライスを食べながら

「俺、本気出したら、焼き肉とか…まだ食える。」

メタボになったら可愛い女の子にもてなくなるわよと笑った。

「大丈夫、そしたら金で解決するから。」

瑛二は真面目な顔で言ったので、再び笑った。

…瑛二ならやりかねない。

途中渋滞に引っかかってしまった。待ち合わせが7時だと言うと、直接行った方が早いと瑛二がギャラリーまで私を送った。

昼間は気が付かなかったが、まだ11月だと言うのに、ライトアップされていた。

「なあ...そういえばさぁお袋が好きだったノクターン覚えてる?作曲家が判んねーんだけど。」

…うーん…

「…すんげーマイナーなヤツだったと思う。」

リストでもショパンでも無い誰か…私は思い出せなかった。
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