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eyes to me~私を見てsecond―愛は無敵―
第4章 マリッジブルー・プリンセス
その頃日比野は、デスクで客の資料を開いていた。
ヘッドフォンからはふたりの愛し合う声が聞こえてくる。
客室のベッドの下に仕掛けた盗聴器の性能はなかなか良い。
ベッドの軋み、切なげで悩ましい美名の吐息、言葉にならない甘い叫びが鼓膜に張り付くようだ。
思わず日比野は溜め息を吐く。
いま、美名は、さぞかし美しいのだろう。
一生を添い遂げる誓いを立てた恋人達は、まさに幸福の絶頂にある。
――だが……
日比野はニヤリと笑い椅子から立ち上がった。
壁に飾られている、式を挙げたカップル達のポートレイトを眺める。
些細な事で仲違いし結婚を止めてしまったり、挙式後に離婚したカップルは少なくない。
ましてや美名は人気ミュージシャン。所詮芸能人の結婚だ。
彼女の周囲には誘惑が多いだろう。