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第5章 眼差しのテンプテーション

　日比野は、まさか頭でも打ったりしていないだろうか？

　美名の脳内に先日綾波と見たテレビのサスペンスドラマのワンシーンが甦る。


　番組の音楽を志村が担当し、何と志村も出演するという事を聞いていたので見たのだが、サスペンスドラマは突っ込み処が満載で、二人は

"何故、追われているのにわざわざ人気の無い場所へ逃げるのか"とか"如何にも怪しい人間から先に消される"とか、"主人公が異様に強すぎる"等と指摘し、時には笑い転げながら楽しんでいた。


　志村の出番はほんの十秒程であったが、いわゆるゲイバーのママ役で、主役の刑事に被害者の写真を見せ『この人、ここに来た事がありますか』と聞かれ『え～？知らないわねえ～……てか刑事さんいい男ね～！サービスするから飲んで行って～！』と、シナを作るという役処だった。