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eyes to me~私を見てsecond―愛は無敵―
第6章 リトルプリンセスとプリンスの憂い
「……風呂でも入ってるのかな」
綾波は立ち寄ったサービスエリアの駐車場で車のボンネットに軽く寄りかかり、鳴らしていたスマホを切って助手席をチラリと見る。
三広がサラサラなマッシュの髪を両手でクシャクシャにかき乱して低く唸っていた。
やれやれと肩を竦めて運転席に乗り込み、頭を軽く叩くが三広は無言だ。
「おいおい……いつまでそんな情けない面をしてるつもりだ……明日は念願の東北大作戦に出るんだろ?恋人と会って鋭気を養う処か魂を抜かれて来たな、って祐樹の奴にどやされるぞ」
東北大作戦、とは、クレッシェンドメンバーが一度は出たいと切望していた、ミュージシャン憧れのロックフェスだ。
クレッシェンドは初の出場でしかもトップバッターを飾る。
――三広も相当気合いを入れていたはずなのだが、桃子とのいさかいでここまで落ち込むとは……
綾波は小さく溜め息を吐いて、静かに語りかけた。
「野暮を承知で聞くが……何があった」