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あたしに全部見せなさいっ!~大学編~
第9章 エピローグ
入学式の日に満開だった桜はいつの間にか散っていた。もうすぐ五月になる。
オレンジ色の夕日の下で、茶色くしなびた花びらが地面に残っていた。踏んでしまうのはちょっと胸が傷んだから、あたしはそれをよけて歩いた。
「……どうかした?」
よたよたと、ふらついているように見えたらしい。隣から柚留が顔を覗きこんでくる。
夕日で翳った柚留の顔をあたしも見つめ返した時。不意に襲ってきた寂しさに、あたしは何も言えなくなった。
春が終わって季節が移り変わっていくように、柚留の気持ちもいつか移り変わっていってしまうのだろうか。
あたしへの気持ちが冷めてしまったり、今回の勘違いのように別の人を好きになったり。
「まりねちゃん?」
「好き」
「え?」
唐突な愛の告白に、柚留は一瞬目をしばたかせる。
「僕も、大好き」
人目を気にするように周りを一度見回して、柚留はぎゅっと抱きしめてくれた。かぎなれた匂いと温かい胸の感触に、どうしようもないくらいに安堵する。
思わずぎゅっと抱き返した。
「何か心配なことでもあった?」