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あたしに全部見せなさいっ!~大学編~
第6章 真実を探れっ!
「確かこっちの方角よね。あの人が歩いていったの」
見かけた廊下に出ると、ターゲットの後ろ姿はすぐに確認できた。
やや明るめの茶髪を背中辺りまで伸ばしている。履いているパンプスにヒールがあるのか、身長は高めだった。春をイメージさせるパステルカラーのワンピースから、すらりとした足が覗いていた。
遠目にもわかるほど、華やかで綺麗な人だった。あんな人がどうして柚留を。
入学して早々、どう知り合ったっていうんだろう。入学式の日、逆ナンでもされて、そのまま好きになったの?
あたしとの恋愛は、そんなに軽かったの?
「あ、入ってった」
小声で耳打ちされて、嫉妬と疑念でぐるぐるしていた思考回路が、現実へと引き戻される。
「見てた? あそこの教室入ってったわよ?」
「どこ?」
「あそこだって」
詩織が指さした教室。そこにはプレートも何もなく、おそらくほとんど講義では使われない空き教室だ。あたしたちがいる棟には、名称のない空き教室がちらちらとあった。
受講者が多くあぶれてしまったり、講義とは違う、例えば会議などの別の目的で必要になった時に使う教室なのだろう。