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終わらない夢
第1章 曖昧な夢
 花屋で小さな花束を買う。

 貴史の大好きなオレンジ色の花。

 英輝も付いていくと行っていたが、断った。今は、私一人で向き合いたいと話をした。

 平日だが、国道のため交通量はかなりある。

 家から駅に向かう、たった十分の所。

 買い物帰りの主婦。

 セールスマン。

 庭先を掃除する人。

 何も変わらない日常がそこにあった。

 なのに、陸橋に近付くだけで息が荒くなる。
 心臓が早鐘のように打ち付ける。
 冷や汗が背中を伝う。

 無意識にあの場所に恐怖を感じていた。

 一歩も足が出ない。

 立ちすくむ。

 ざわざわと耳障りな音がする。

 日射しが視界を奪う。


「貴史君のお母さん?」


 不意に後ろから声をかけられる。

 その声に安堵する。
 ゆっくり振り向くと、そこに磯山先生がいた。

「…い、磯山先生…。」

 目眩を起こしそうになり、側のブロック塀に手をかける。

 磯山先生が素早く駆け寄り、肩に手を添える。

「大丈夫ですか?」

「は、はい。あ、あの…先生。」

「とりあえず、少し日陰に行きましょう。今日は日射しが強いですから。」

 塀沿いに道から反れ、小さな金物屋の店先に移動する。軒先に立ち、ハンカチを差し出される。

「冷や汗が。あ、ちょっと待ってて下さい。」

 そう言うなり、店先にある自販機でスポーツ飲料のペットボトルを買ってくる。

「どうぞ。」

「ありがとうございます。」

 素直に受けとり、一口飲む。

「磯山先生、授業は?」

 平日の昼前。
 学校の授業はどうしたんだろう。

「校長先生に貴史君の月命日の話をしたら、行ってきなさいと許可をもらいまして。半休をいただきました。」

 よくみると、手には菊の花とお菓子の袋を持っている。

「まだ、あそこには行けませんね。僕が一緒にその花束を供えて来ましょうか?」

 私の持っていた花束を指さし、微笑む。

「あ…。はい。お願いします。」

 力が入っていたのか、花束のリボンが歪んでいる。

 磯山先生は私の手を取る。

「こんなに、冷たくなって。」

 温かい大きな手に、心が揺れる。

 磯山先生は花束を持ち、陸橋に向かう。

「少し、待っていて下さいね。」



 しばらくして、磯山先生が帰ってくる。

「お待たせしました。」



 
 
 
 
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