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終わらない夢
第1章 曖昧な夢
「私は十年前、主人とお見合いで結婚したんです。」

 結局、磯山先生が作ってくれたインスタントラーメンをお昼にいただくことになった。

 何て事のない味に、少しだけ空腹を覚える。

 キャベツやネギに卵を落とした、優しい味。一口だけ食べてみる。

「…おいしい。」

「それは、よかった。実家の土曜日の昼飯なんて、こんなもんですよ。」

 二人でテーブルに向かい合わせに、笑い合う。

 久しぶりに笑った。

 食べ物を美味しいと感じた。

「…二十歳でお見合いですか?」

「私の両親は小さい頃に他界し、親戚もいなくて。父の友人の家で育てられたんです。あ、でもとても優しくてちゃんと育ててくれましたよ。二十歳でお見合いを申し出たのも、私からです。」

 育ての親への、小さな恩返し。

 お見合いしたのは、育ての親の知り合い。

 七歳年上の英輝だった。

 
 愛する事は出来たかと聞かれたら、好意はもてたがトキメキもなく、恋することもなかった。

 二年後、貴史が生まれ孤独だった私に、血をわけた家族が出来た。

 幸せだった。

 それなりに、英輝には家族としての愛情も湧き普通の家族を生きてこれた。

「…貴史は、私の生き甲斐でした。たった一人の、この世でたった一人の私の家族。」

 それなのに。

「先生、どれくらい泣いたら、救われるんでしょうか?」

 先生は身を乗り出し、私の頬を両手で包む。

 少しだけ見つめ合う。

 目を伏せ、温かい唇を重ねる。

 貴史がいなくなって、まだ一月。

 頭では理解しているが、身体は純粋に欲望を求める。

 英輝以外、誰ともしたことなないキス。

 こんなにキスって、気持ちよいものだったなんて知らなかった。

 柔らかく温かい舌が、私の唇をなぞる。

 薄らと口をあけ、先生の舌を受け入れる。

「…はぁ…っ。」

 遠慮なく入り込む舌は、歯をなぞり奥へと差し込まれる。恐る恐る、自分の舌を先生の舌を探す。

 お互い絡み合い、涎や吐息にまみれていく。

 先生は立ち上がり、私の身体をまさぐりはじめる。服の上から、少しだけ荒めに胸を揉まれる。

「…あ、っ…っ。」

 甘い痺れに、身体を震わせる。

 
 そう、あれが私の罰。

 私が、この人に恋をしたから。

 だから、あれは私の罰。
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