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花籠屋敷
第4章 分水嶺
一悶着後…滞りなく配膳は終わり、昼餉の運び出しの段までついた。後はお客の相手に着く者は着いて、そうで無い者は御役御免になる。

配膳台の前で背伸びをする桔梗に竹梅が鈴蘭を連れて来た。

「いやー、ごめんねぇ急に手伝わせて。でも助かったよ。私は竹梅一応、組取り女中よー…でこっちの青い妙チクリンのはうちの女中の鈴蘭」

「私…鈴蘭…よろしく…」

竹梅はクセのある淡い苔色の髪をショートボブにし、細い銀縁の丸眼鏡をしていた。眼鏡の奥は愛嬌のあるタレ目だが何を考えているのか読めない、一筋縄ではいかない雰囲気がある。

鈴蘭は水色の髪を前上りのロングに段の入った髪形で頭頂部には何本かアホ毛が出ていた。目は丸いどんぐり目で珍しく瞳も青い、肌も白く異国の血が混じっているようだ。容姿もだが、それ以上に気を引いたのは両手の手袋だった。
黒い革を何枚か鎖で繋いで出来ていて、手首から先をボンテージ衣装に包んだようだった…

組取り女中とは、椿のように女中達に仕事を割り振る古株の女中だ…椿以外の組取り女中と会うのは初めてだ。
と配膳の客着きの女中の群れに見知った顔を見つける

椿だ!

「桔梗、探したわ!昼から客着きよ!早く来なさい!」



「何だ、椿の組の子だったの?良かったねぇ…椿はまともな部類ねー…うん、一番まともだねぇ」

椿を見ると竹梅は目を細めた…物思いにふける竹梅だったが、鈴蘭が顔を青くする

「竹梅……ごめん…気持ち悪い」

「うおっ!待った待った鈴蘭君!ここで吐くのは禁止だからね!厠も側だし!流しも其処だし!我慢して我慢!…色々お喋りしたいけどお互い今日は時間が無いようだ!またねぇ桔梗君!鈴蘭!待って!今吐いたら眼鏡班長も塗れるから!眼鏡班長好きだから我慢出来るよね鈴蘭君!ねっ!」

竹梅は青ざめた鈴蘭をおんぶして走っていく…
桔梗は竹梅達の後ろ姿を見届けた後、客着きの女中の群れに混じって行った


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