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花籠屋敷
第4章 分水嶺
客着きの女中の群れの中に漸く野菊や石楠花の姿も見つける。食台を両手で運びながら、二人の側へ桔梗は近づいた。屋敷の赤絨毯の上を宴会場を目指して歩く袴の行進。

「桔梗!身体大丈夫?…頭、痛く無い?」

一定の歩幅で規則正しく食台を運びながら、野菊の目が桔梗の顔を見つめる。

「うん…大丈夫…心配させてごめん」

桔梗は野菊の心配を無くすように微笑を浮かべて答えた。次第に宴会場に近づいてくる。先客の談笑の声が聞こえて来た。ふと、袖から溢れた札を見た左の石楠花が、大きな声をあげた

「桔梗!お前、左手に札って!買われたのか!誰に?」

「ごめん…あまり、話したく無い…後で…話すから」

石楠花の声に周りの女中の視線が集まる。桔梗は困った表情を浮かべれば石楠花に眉を潜めた

「わっ、悪い…急な事であたいもびっくりしちまってさ…」

野菊の顔が、また心配そうに曇った。自分の身体の事情を知ってる野菊はもどかしそうに口を開いた

「桔梗…嫌じゃない?……頭打った次の日だし…現に気を失ってたんだから、お客さん帰るまで、養生したら?」

「椿さんの前で札渡ししたんだ…逃げられないよ…それに…逆に私の事を知れば考え直すだろうし」

桔梗は、藤丸が考え直す方に賭けた…少なくとも色艶をうんと味わった中年以降なら、女に飽きる事もあるだろうが、見た感じ若い藤丸が同じように女に飽きて男を抱いて喜ぶとは到底考えられない。顔が好みでも、身体が男では気も落ちるだろう…

「札持ちは、札のお客に着いて頂戴!他は自由よ、お客に呼ばれたらそっちへ!もし呼び込みが無ければ空いたお客に着いて頂戴!」

宴会場前で椿が指示を出しながら、女中達の顔を眺めている。仕事中の椿の顔は厳しい、いつもは優しく接するが仕事の時は張り詰めた空気を放っていた。

椿を先頭に宴会場の中へと入っていく…
自分を、買った男は丁度会場真ん中程で胡座をかいていた。桔梗を、見つけると手招きはせず口角を上げて見つめてくる。

分水嶺を過ぎてしまった桔梗は、覚悟を決めて藤丸の前に食台を運び向かい合って藤丸を見つめた
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