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花籠屋敷
第1章 屋敷入りの記憶
柔らかな微笑を浮かべ時宗は桔梗を眺める。品定めされた桔梗は赤面した。褒められる事は嬉しいが女性のような顔立ちを褒められる事は、男性として複雑な気持ちだった。

幾らか山合いを越えると深緑の木々の景色が開け、大きな赤い屋根の屋敷が現れた。開きっぱなしの門を潜り、整えられた広場で馬車が速度を落としていく。

完全に止まると扉を運転手が開き二人を降ろす。屋敷からは何人か袴姿の女性が出て、時宗の荷物運びや馬車の掃除を始めた。

「野菊!この子を湯屋に連れて行きなさい」

仕事が見つからずウロウロ歩く黄色い袴の女の子が、こちらに走ってくる。年は桔梗と同じ位に見える。茶色のポニーテールに人懐っこいクリクリした目の童顔が特徴的だった。

「時宗様!この子は屋敷に入る子だよね…?」

野菊は興味津々に桔梗を眺め、また質問の答えを急かすように時宗を見た。

「ああ、今日から屋敷入りする…が、訳ありだし、見ての通り買ってすぐだ…綺麗に身支度を整えないといかん。まずは湯だ…それから髪切り屋を呼べ、後仕立屋も頼んでくれるか?」

「大支度ですね時宗様!…所でこの子の名前は?」

時宗の答えに野菊の表情は明るさを増した。桔梗は自分と同じ位の年の人間がいる事に少し安堵していた。

「名前は桔梗だ。さあ、野菊後は頼んだ。屋敷の外から湯屋に入れ、そのまま屋敷に入れては、掃除が大変だ。ああ、椿!その荷物は重いから私が持って行こう。調理場をまかせる。後客人とこの子が鉢合わせないようにしてくれ、流石にあの姿をお客に見せるのは屋敷の格が落ちる」

時宗は慌ただしく女中達に指示を出しながら屋敷に消えていった。

「湯屋はこっち!……あっ、いけない時宗様…桔梗を縛ったまま屋敷に入られてしまったわ…途中庭の手入れ倉庫があるからそこで縄を切りましょう」

湯屋は屋敷の真裏に位置し丁度屋敷を大きく回らなくてはならなかった。屋敷の周りは沢山の花で飾られ、屋敷は煉瓦造の立派なものだ…遠くで湯煙を上げる煙突が見えた。

「桔梗、こっち!今手足楽にしてあげる」
木を組んだ小屋を見つければ野菊は中へと入っていく。桔梗も後をついて中に入った
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