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第6章 幕引き

御膳を並べながらまばらな宴会場に座る二人。
客取りの翌日は午前中はフリーだ。運が良ければ一日フリーなんて事もある…がフリーが幸運かどうかは相手次第…桔梗は藤丸の隣で汁椀を開ける…香しい味噌の匂いが立ち昇る…赤だしだった。

「所で桔梗？」御飯の箸を止めると藤丸が此方を見る

「何でしょう？」急に箸を止める藤丸に合わせて赤だしを啜るのを止める桔梗

「何で、初めに男だって言わなかったんだ？」藤丸が不思議そうに尋ねる。確かに相手からすれば不思議な事だが場所がまずい…桔梗は慌てて藤丸に向かって人差し指を出して見せる

「椿さんがいる前で言えないですよ！知ってるのは屋敷のオーナーと野菊って女中だけなんですから！」険しい顔で藤丸の口を止める
と、周りの客や女中の表情を見る…別段変わった様子は無い…が、聞かれたかもしれない…

「わっ、悪い…もう周知の事実かと…」バツの悪そうな藤丸。少し張り詰めた空気の中入り口に椿と笠松が入って来る。笠松は藤丸の前、椿は桔梗の前に座り四人で向かい合う形に座った

「おはよう桔梗。御飯は美味しいかしら？食べられる？」椿が柔らかく声をかける。桔梗は椿の探る様な会話に桔梗は普段と変わらず答える。

「はい、美味しいです。」桔梗が会話に返事をすると、笠松が口を開いた

「で、藤丸何をするんだ？」笠松は藤丸にそう問い掛けると、御飯を掻き込む。藤丸は焼き魚を器用に取り分けながら思案する。

「庭球ダブルスでどうだ？」藤丸はニヤリと笑みを浮かべる

「おととい俺の勝ちだったが、まだやるか？別の種目の方が勝率あるんじゃないか？」

「おとといのは事故もあったし、無効だ無効！再試合、仕切り直し！」次第にヒートアップする二人。椿と桔梗はその二人の横で黙々と朝餉を食べた。良き友人の競い合いという程で桔梗は微笑ましく思った。