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花籠屋敷
第6章 幕引き
「じゃあ、私の組の人は一緒に談話室。お願いします。梔子(くちなし)の組の方には運動場をお願いします」大広間の女中の群れの先頭で椿が指示を飛ばす。その隣に椿に負けず劣らず存在感のある女中が一人佇んでいた。
艶々のたっぷりした黒髪を長く伸ばし大きくランダムにカールさせている。左にルーズに流れた前髪が気怠げな雰囲気を色濃くしていた。シャープで鋭い切れ長の目に薄い唇。さらに此れから掃除というのに真っ白い高そうな袴姿なのも、より一層存在感を大きくする。
「みんな聞いたー?聞いたらさっさと掃除行くよー」椿の隣、梔子は首後ろを掻きながら、大広間を出て行く。
ぞろぞろと梔子組が後をついていった。
「梔子姉さん!掃除なんて本当怠いですよ!こういうの椿組の仕事で私ら関係無いじゃないですかぁ…」派手な女中衆から不満が漏れる

「そうねー超面倒。だからさっさと終わらせるのよ。良い事言ったあんたには窓拭きの仕事あげるわ」梔子が不満を言う女中の額を指で突いて女中をおちょくると笑い声が上がる。そのままザワザワと廊下を消えていった。

「凄い存在感…」桔梗は派手な女中達をまとめる梔子の姿に驚き目を丸くする

「椿姉さんと同じ組取り女中の梔子姉さん…梔子姉さんは客取り専門の女中をまとめて仕事の割り振りしているの。椿姉さんも人気はあるけど、客取りで稼いでる金額は梔子姉さんの方が凄いわ…凄かった時は一晩で…」そう説明しながら野菊が7本指を見せる

「7万?」桔梗は不思議そうに尋ねた

「70万。客取りの値段は基本金5万に客次第の心付けで6〜7万位だから、普通の女中の10倍ね」野菊の答えに桔梗は息を飲んだ。

「じゃあ、私の組は談話室よ。皆お願いね」梔子が消えたのを見ると小さく溜息をついた後椿が談話室へ入っていった。
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