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花籠屋敷
第6章 幕引き
「あいよー!ほら、桔梗も野菊も行くぜ。こっちもさっさと終わらせようぜ」野菊と話していると石楠花が背中をハタキで叩いて前へ急かす。桔梗は談話室へと入った。

部屋中程に暖炉があり暖炉周りには茶器や囲碁などのテーブルゲームが片付けられている。それ以外壁には本棚がずらりと並び立ちソファーと机が綺麗に並べられていた。こんな部屋の何を掃除するのか?と、疑問を持つも椿の指示に従うと埃や汚れがあちこちにあった。

「意外に溜まってるんだね」本棚の中を雑巾で拭きながら桔梗は呟く。

「本戻したり、片付けはしてもいざ全部出して拭いちゃおうとは、誰も考えないもんね」隣で野菊が大量の本と格闘していた。壁一面ずらりと並んだ本棚は、桔梗の背丈位もあるなかなかの大物だ。野菊は桔梗が拭き終わった後の本棚へ本を戻していた。半ばまで来たが腰に負担が掛かるらしく野菊は何度か背伸びをする

椿は先輩の女中に指示を出すと、数名の女中を連れて奥にしまい込んだ茶器や小物を洗いに談話室を出て行った

「桔梗〜…やっぱりパス。あたい腕が疲れちまったよ」本棚上を叩いていた石楠花が腕を揉みながら桔梗にハタキを渡しに来た。桔梗はハタキを受け取ると軽々と本棚上を叩いていく

「良いなぁ桔梗…あたいも身長もっとあれば良いのに」座り込んで腕を揉む石楠花が愚痴を零す。

「小っちゃい方が可愛いよ」桔梗は本心で慰めた。小っちゃくて、元気一杯でふわふわの髪で動き回る石楠花は可愛いと本気で思う。

「可愛いなんて男の餌にされるだけだろ。あたいも椿姐や梔子姐みたいに大人びた身体が良かったなぁ…男も軽々しく寄ってこないだろうし」石楠花が口を尖らせる。桔梗は石楠花の男性に対する敵対心に多少不安を抱く…自分の正体が分かった後もこうしていられるのだろうか?…

「ちょっと!本棚まだ終わらないの!」机を拭いていた先輩の女中から厳しい声が飛ぶ。水仙だ。長い前髪を掻き分けると此方を睨んだ。長い髪を片側三つ編みにしていて多少ヒステリックな面がある。細面で柳葉のような目元をキツく細める。繊細な顔の造形とは裏腹に険しい表情を刻み込んでいた

「ごめんなさい!すぐ、片付けます!」桔梗はすぐに謝ると、本棚の仕事の手を速める
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