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第6章 幕引き

「でっ、でまかせ言ってんじゃねぇよ！」我に返った石楠花が水仙に吠える。水仙は必死に桔梗の秘密を認めない様を嘲笑う。言葉を続けた

「今朝、朝餉の時に聞いたのよ。私…藤丸様がそこのオカマに向かって、何で最初に男だって言わなかったんだって言ったのを！そしたらそこのオカマは言いましたとさ…椿姐さんの前で言えないですって！知ってるのは時宗様と、野菊って女中だけですって！」水仙が楽しげに大声で話した。表情を曇らせる石楠花…桔梗は黙って俯く事しか出来ない。石楠花が不安げに桔梗に尋ねる

「桔梗…嘘だろ…」石楠花の声が震えていた。しかし事実は事実だ…桔梗は石楠花の目を見詰めると一言だけ答えた

「ごめん…本当だ…僕は…男だ…」言葉を失う石楠花は桔梗を見詰める事しか出来なかった。桔梗は罪悪感と孤独感で胸が一杯になる。立ち竦んだまま俯いた。野菊が無言で桔梗の手を握った…四面楚歌のような様相の中で野菊の手の温かさだけが優しかった

「私が居ない間に一体何をしているの？事情を説明して。」椿が談話室の中に入ってくる。部屋の異様な雰囲気に眉を潜ませる

「掃除の段取りの悪さで喧嘩になりました」野菊が隣で端的に説明する。

「どういう風に？」椿がさらに問う

「桔梗と石楠花と私の本棚の掃除が先輩の掃除に比べて遅いと…石楠花がそれに対して人の割り振りが不平等だと反論して…」野菊は冷静にあったことだけを話すように言葉を選ぶ

「それで、何故石楠花が血を流して水仙の頬が赤く腫れているのかしら？」椿の目線が石楠花と水仙を捉える

「言い合いをしてるうちに水仙先輩と石楠花が取っ組み合いを始めて…」野菊は話の内容までは伝えなかった。

「そう…分かった。石楠花と水仙は今から私の所に来なさい…床だけ終わらせて、後の皆は自由にしなさい」椿は厳しい目で談話室内の女中を一瞥すると石楠花と水仙を連れて談話室を出て行く…

女中達はおずおずと掃除を始める…桔梗と野菊も無言で掃除を終わらせる事にした…