この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
花籠屋敷
第6章 幕引き
自然解散になった椿組はおのおのバラバラに散る事になった。すれ違う女中達の目線が痛い。だが当たり前の事だ…女の園の中に一人男が混じるなど狂気の沙汰では無い。桔梗は俯いたまま談話室を後にする。野菊が隣を歩いた

「桔梗…私は桔梗が男でも女でも大事な友達だよ」野菊が歩調を合わせる。

「うん…有難う」桔梗は感謝だけ告げると時計を見る。藤丸達との約束の時間も近づいて来たが今は行ける気がしない。桔梗は野菊と無言で歩いた。何か話そうにも話す空気でも無い…お互い気まずい距離感の中、代弁してくれたのは桔梗の腹だった。グルルルと腹時計が空腹を知らせる

「あはは…お腹すいたね」腹時計を聞いて野菊が明るく問い掛ける。間の抜けた腹時計の音は少しだけ空気感を軽くしてくれた。桔梗も重い口を開いた

「うん、宴会場…食べに行こっか」足を宴会場の方へ向ける。
「待って…人のいる所…嫌でしょ。部屋で食べよう。調理場から食台だけ持ってさ」野菊が提案する。桔梗は頷くと二人で調理場へ向かう。調理場には竹梅の姿がある。此方に気付くと注文を取りに来た。

「おやおや、いつかの桔梗君!ご飯の時間かなー?」竹梅は軽い口調で笑顔を見せる。桔梗は、「はい、二人分」と答えると、竹梅が眼鏡を直しながら意味深に眉を吊り上げる。

「前は上の空で、今日はどんよりしてるね紫の上。まあ、花籠の中じゃ浮いて沈んで色々あるか…」そういって竹梅は少し笑うと何も聞かず、昼餉を二人分運んで来てくれた。親しげな竹梅の態度に、野菊は少し意外そうな顔をしていた。

「竹梅さんも、浮いたり、沈んだり大変ですか?…」何となく桔梗は聞いてみる…生きてる限り浮いて沈んで大変なのは当たり前だ…ただ何となく会うたび飄々とした竹梅の答えが聞きたかった。

「私の場合は沈みすぎてブラジルに来ちゃったって感じかな…ふふーん…ドン底の更に底まで沈んでしまえば、突き抜けてまた浮いてくるのさ。地球の地面ずっと掘ると最初は地面でも、その内反対側の地表に出れるだろう」指で輪っかを作り、人差し指で輪っかを貫きながら笑って答える竹梅。

「確かに…そうですね」
「落ち込んじゃだめだ、とか…しっかりしなきゃとか無理強いして壊れる位ならいっそ落ち込みたいだけ、堕落したいだけすれば良いのさ。その内そうしてんのも阿呆らしくなる。」
/72ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ