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【SS】吼える月
第1章 【5000拍手記念】運命~サクの両親~
愛おしい――。
そうだ、自分に強い愛を見せてくれるハンが、愛おしくてたまらないのだ。
――なぁお前、俺の女にならねぇ?
不躾にも思うくらい、まっすぐ自分を見つめたハンに、あの時から惹かれていたのだ。
どんなに女を捨てていても、女だからこそ喜べる悦びがある。
永遠の伴侶を見つけた運命の音を……自分は聞いていたように思うのだ。
女になりたい。
ハンに愛され、ハンを愛する女でありたい。
ハンにすべてを捧げたい――。
男蔑視の国で育ったサラにとって、それは初めての激しい恋だった。
朱雀の武神将の誇りもすべて投げ捨てて、ひとりの女としてハンの身体を感じたいと思ってしまう。抱かれたいと思ってしまう。
ハンだから。
「好き……」
サラから漏れたのは、燃えるような恋情。
びくびくと大きくなるハン自身を絡め取るように、すべてを奪いたいかのように、サラは女に戻って言った。
「好きなの……」
サラから、ハンに唇が押しつけられた。
惑っていたハンの目が、やがて男のものに変わる。
「奥に……注いでやる」
突然始まった、貫くような激しい律動にサラは声を上げる。サラを抱きしめながら、ハンは猛るように叫んだ。
「俺とお前の子供を、産めよ。俺の……妻になれ。名実ともに、俺のものになれ!」
そのためには、サラは武神将の座を捨てないといけない。
「俺のところに来い、サラ……っ」
「うんっ、ぁあああ……」
サラの目から歓喜の涙が零れた。
すぐにはうまくいかないかもしれない。代々の武神将を出すイーツェー家も祠官も許さないだろう。
しかし、ハンと一緒になるために、この恋に命をかけることを決めた。武神将の代わりは妹のヨンガでもできるが、ハンの代わりは誰もできない。
「すべてを捨てて俺のところに来い! サラ……=シェンウになれ!」
ハンとともに、ハンとの子供を育てたいと、未来を夢見てしまった。緋陵と緋陵の民を守るという夢は、書き換えられてしまったのだ。
こんな女、朱雀も呆れるだろう。
「ハンのお嫁さんに……なりたいっ!」
秘匿された森の中、口づけあい愛を深めていくふたりは、やがて歓喜に満ちた男と女の声を上げ、白濁に塗れた――。