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×アリエナイカノジョ×
第9章 ◆ Scene01
 
「…あれは…」

 坊ちゃん刈りに黒縁メガネを掛けた、周りからの印象が薄すぎる薄井影人。

 いつもなら煩いくらいに話し続けている正行の姿は隣に無かった。

 珍しく教室を出て直ぐに別れた二人。

 しかし、帰宅をしたところで何もする事も無い影人。

 直ぐに帰宅することも無く校内をぶらぶらと歩いていた。

 生徒や教師と擦れ違っても視線も受けない。

 当然声を掛けられる事も無く、影人は廊下を当てもなく歩いていた。

 その時、不意に中庭を挟んだ旧校舎の廊下を歩く人影を視野に入れた。

 思わず立ち止まり、その人影を見詰める。

 眼鏡を掛けていても、即座にその人物を特定する。

 自身の想い人で有れば尚更、視力の悪さを乗り越えて判断したのだった。

「一体…あんなトコで………」

 誰も滅多に立ち入らない旧校舎。

 余計な詮索はイケないと思いながらも、想い人の行動が気になる。

 ましてや、誰も居ない旧校舎を一人歩いていれば、尚更理由が気になる。


…きっと…告白……とかかなぁ……


 可能性が脳裏を過ぎると、影人の足は無意識に旧校舎へと向かっていた。 
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