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×アリエナイカノジョ×
第9章 ◆ Scene01
紗英の向かった先を無意識に予測して足を運ぶ影人。
照明も点けられずに、窓から射し込む日の光だけが照らす廊下を進む。
「…確か…こっちだよな…」
中庭を越えて紗英を見掛けた場所へと向かっていく。
人気の無い旧校舎の雰囲気に、僅かながら心拍数を上げていく。
時折、自らの足音にビクッと体を強張らせる一面も見せながら、影人は階段を上がっていった。
「えっと……こっちの方に歩いて………」
階段を上がったところで、左右を確認した影人。
右へと向けた顔が止まった。
「…あれは………」
三クラス分程の教室を過ぎた辺りの廊下。
そこの床で膝を着いている人影。
瞬間に影人の胸がドキッと高鳴った。
眼鏡を掛けていても、特定の人物なら遠くからでも判断できるふざけた影人の視力。
「…なに…してんだろ…」
膝を着いた儘で立ち上がろうとしない紗英の後ろ姿に疑問を抱く。
影人は無意識に足音を忍ばせていた。