この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
×アリエナイカノジョ×
第9章 ◆ Scene01
ゆっくりと近付くにつれて大きくなる紗英の後ろ姿。
紗英の纏っている雰囲気から、どことなく声を掛けられないでいた。
小刻みに肩が震え、両腕が僅かに動いている。
…こんなとこで…
疑問は更に増していく。
残り十数メートルという場所まで近付けば、不意に傍らの教室の扉が開いているのが視界に飛び込んだ。
この儘真後ろに立つのが憚【ハバカ】れた影人。
何の躊躇いも無く、その扉の隙間へと体を滑り込ませ、空室の中を移動していった。
…これで前の扉から…
音を立てないようにとゆっくりと扉を引く。
頭一つ分程の隙間が出来ると、影人は恐る恐る顔を覗かせた。
教室と廊下を隔てる壁にある引き違い窓。
そこから立て膝を着いて中を覗き込んでいる紗英の姿があった。
…気付かれないようにしないと…
黙って覗いている後ろめたさが先に立ち、影人は息を殺して数メートル先の紗英を見詰め始めたときだった。
「…えっ………」