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×アリエナイカノジョ×
第10章 ◆ Scene02
小綺麗な家屋が並ぶ住宅街に、一つだけ昭和初期を匂わせるような古びた平屋。
門扉も無く、道路と敷地を隔てるのは胸元の高さまで育った植栽。
首だけを敷地に覗き込むと、小さな庭が有るだけだった。
「…此処で…良いんだよねぇ………」
母親に言われた住所を今一度思い浮かべ、塗装が剥がれ掛かった表札を見詰める。
辛うじて判別できる小さな文字は、明らかに教えて貰った場所に違いなかった。
「…さっさと済ませて帰ろ…」
持たされた荷物を小脇に抱え、気が乗らない美穂は敷地内へと足を踏み入れた。
通りから僅か十数歩で辿り着く玄関先。
格子に曇りガラスを嵌め込んだ引き戸が、古い家屋である事を再認識させる。
「えっと………」
首を左右へと振る。
「………んー………」
隅から隅まで視線を向けても、見当たらないインターホン。
簡単に割れそうな引き戸をノックするのも躊躇う。
「…どうしよう…」
声を出して呼ぶという選択肢に何となく恥ずかしさを感じた美穂は暫く佇んでいた。