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×アリエナイカノジョ×
第10章 ◆ Scene02
恐る恐る振り返る。
「ああ…やっぱり」
美穂の視界には黒縁メガネを掛けた坊ちゃん刈りの男子。
「あ…え、えっと………」
「薄井。薄井影人だよ」
影人も慣れたもので、どぎまぎする美穂の表情から直ぐ様名乗ったのだった。
「あ、あはは。い、いや、ね……。名前もそう……だけど………」
尻窄みに声が小さくなる美穂。
他人の敷地で延々と立ち尽くしていた事も、狼狽えた一因であった。
「あ。そういえば…どうして此処に?」
動揺する美穂を余所に、影人は躊躇いも無く敷地内へと足を踏み入れ、美穂の脇を通り過ぎる。
「あ、アタシは…お母さんのお遣い…に………」
美穂は、鍵を取り出して扉を解錠する影人の背中を見詰める。
「あぁ。そうなんだ」
ガラガラと扉を引いて振り返る影人は、僅かに苦笑を浮かばせていた。
「昼間は殆ど居る事ないから」
「てか…此処……薄井…くん家?」